第1日 〜2009.6.13(土)〜

熊本交通センター→松島→樋の島宮の下→本渡バスセンター

天草回遊きっぷ 4000円
天草回遊乗車券  九州にはSUNQパスという、高速バス・一般路線バス乗り放題のきっぷがある。たいへん便利で使い方によってはかなり割安になる。
 宮崎、鹿児島を除く5県と下関で使える「北部九州+下関」が3日間で8000円。九州全部と下関で使える「全九州+下関」は3日間用10000円、4日間用14000円だ。
 しかしながら、今回乗りに行くのは熊本県の天草だけ。ここでバスを運行している九州産交グループでは、格安の「天草回遊きっぷ」を発売している。熊本交通センター〜三角西港間は行きか帰りのどちらか片道しか使えないが、そこから先の天草地域内は何回でも4日間乗り降りできて4000円という値段だ。
 レールウェイライター種村直樹氏の著書の中に、日本外周の旅でこのきっぷを購入し、4000円という値段の高さにびっくりしたと書かれていたのが1993年のこと。すくなくとも15年以上値上げされていないようで、今となっては割安なきっぷという印象が強い。
 航空機で阿蘇くまもと空港に着いた足でそのまま熊本交通センターに行った。窓口で、明日から使用の「天草回遊きっぷ」を売ってくれるかどうかたずねると、しばらくした渡されたのがこのきっぷだった。
1.熊本交通センター8:07→9:47松島(九州産交バス)1480円 熊本22か24−43 日デ/西工
交通センターのあまくさ号 三角線を見ながら走る
不知火海を見る 天草五橋の1号橋  最初に乗るのは、熊本交通センターから天草下島の本渡まで2時間半近くかけて走る快速「あまくさ」号。運行本数も多く、土曜日の今日も毎時1〜2本で22本も運転されている。次の便は、本渡バスセンターを越え天草アレグリアガーデンという温泉などがある観光ホテルまで行く便だ。
 バスセンターからの乗車は10人以上。思ったよりたくさん乗ったなという印象。熊本農業高校前で女子高生が1人降りたほかは、みんな天草まで乗り通していた。やはり、乗り換えなしで県都熊本と天草を結んでいるから、それなりの利用者数と本数が確保されているのだろう。
 バスはちょっと古めの高速バスといった感じの車両。方向幕上に「あまくさ」と愛称名が入っているのが、列車のヘッドマークのようでちょっとかっこいい。宇土で右折して、その先はJR三角線とともに宇土半島の北岸を走っていく。住吉駅前を過ぎると、いよいよ右手に島原湾が見えてきた。潮が満ちている時間なのだろうか、海の中に電柱が立って電線が伸びている。電線の終端あたりには、小舟がたくさんでているのだが、いったいこれが何なのかはわからなかった。
 赤瀬を過ぎると、鉄道は峠越えで三角に向かい、バスは北岸の国道をそのまま走っていく。やがて小さな島とその後ろに大きな島が見える。漁船もたくさんでている。どうやら、向いに見えるのが、本渡から渡る最初の島、大矢野島らしい。
 古い建物や燈台が残る三角西港まで来ると、本土と大矢野島を結ぶ天草五橋の天草五橋の1号橋が見えてきた。大矢野島は旅の帰りに寄ることにして、まずは天草上島の松島まで乗っていく。
松島に着いたあまくさ号
松島から本渡まで 天草上島の乗車経路
第1日の乗車経路
2.観光船乗り場10:00→10:34観光船乗り場(パールライン観光)1500円 第5まつしま丸 
観光船乗り場 第5あまくさ丸
パールセンター 水上スキーをする人  観光船乗り場というバス停があったのだが、次のバスは松島始発。1区間乗り残すのもいやだったので、松島までバスに乗った。ここは売店や出札口があるバス駅で、その出札口には「荷物預かり1個100円」の貼り紙があった。これ幸いと、大きなバッグを預けて、観光船乗り場へと小走りに急ぐ。
 乗り場に着いたのは、出港予定の2分前。これはダメかなと思ったが、すぐにきっぷを売ってくれて、乗客なしで通過しようかという観光船がやってきた。観光船といっても大きめのクルーザーといった感じ。舳先を岸壁に押しつけて、その通路になった舳先から乗り込んでいく。中は真ん中が通路の畳敷きの大部屋。どこに行こうかと迷っていると「上がありますよ」と船長さんから声がかかる。
 ハシゴのような急な階段を上れば、たしかにオープン構造の2階席があった。すでにご夫婦が1組乗船されていた。
 観光案内のテープが流れて、いよいよ出航。まずは天草上島と前島に架かる赤い5号橋(松島橋)をくぐる。4号橋を右に見て進み、その先で右に旋回して大池島と永浦島に架かる3号橋(中の橋)をくぐる。この先で、観光船の後ろからウェイクボードをする人がついてくる。さらに左に旋回すると、永浦島と大矢野島に架かる2号橋(大矢野橋)が見える。観光船は、2号橋をくぐったところでUターン。
 帰りは3号橋をくぐらず、そのまま前島の方に進み、天草パールセンターなどを見ながら、池島と前島に架かる4号橋(前島橋)をくぐってから5号橋をくぐり松島に戻った。
真珠の養殖
3.松島11:23→11:48姫戸港(産交バス)530円 熊本22か26−33 日野 
松島の産交バス 車窓風景
車窓風景  松島からは牟田経由の姫戸港ゆきのバスに乗る。天草上島の東南部の海岸線を行く路線なのだが、とにかく本数が少ない。限られた日数で天草を回るので、できる限り海岸線に沿って乗ってみようと、この路線を選んだのだ。
 バスは発車時刻の直前にやってきて、乗っていたお客を降ろすと、松島の駐車スペースへ移動した。写真を撮ってから乗り込むと、運転士さんから声がかかる。「どこまで行きます?」と声がかかる。「終点まで。この路線に乗ってみたくて」というと、本来の担当者が急病になってしまい急遽代役で来たのだが、この路線を運転するのが初めてで、今ひとつ経路が不安なのだという。
 申し訳ないが、こちらは旅行者。経路などわかるはずもない。不安はあるものの、事務所で再度経路を確認して、定刻3分遅れで松島を出発した。
 松島を出たときは、乗客は自分だけだったけれども、次の運動公園前でさっそく地元の方が乗ってきた。運転士さんは、やはり同じことを聞いていた。この方も終点まで行くとのことで、心強い味方ができたようだ。
 国道からそれた集落の中は多少狭隘路を走るときもあったが、海岸沿いの国道は走りやすい道路だ。ところが、集落と集落の間は山が海まで迫っていて、人家がないのだ。とくに、東阿村からあずばたけまでは5km近く人家はなく、バス停もなかった。
4.姫戸港11:58→12:20樋の島宮の下(産交バス)360円 熊本22か24−46 日デ/富士重工 
松島の産交バス 姫戸港の産交バス
椚島(くぐしま)へ 樋の島大橋へ
樋の島大橋を渡る 樋の島宮の下バス停  姫戸港からは、赤崎行きのバスに乗っていく。このバスは松島始発で、先ほど乗った牟田経由の数分後に松島を出て、内陸部を走って姫戸港まで来るのだ。赤崎へ行くバスは1日数本あるのだけれども、下り便の中で昼と夕の2本だけは、天草上島と橋でつながっている樋島へ寄り道する。今度の便はその樋島経由なので、ぜひその樋島で途中下車してみよう。
 写真左上は、そのバスを松島で発車前に撮ったもの。行き先表示には、しっかり樋島の文字が見える。
 姫戸港では、この時間3本のバスがそろう。乗ってきたバスが牟田経由松島行きになって待機し、松島からの赤崎行き、赤崎からの松島行きもここで行き違う。やがて、松島で写真を撮ったあのバスがやってきて乗り込む。車内には10人弱の乗客が乗っていた。
 姫戸から先は、国道でもところどころ狭隘路があったり、旧道に入るところもあった。そんな旧道にある龍ヶ岳郵便局前バス停を過ぎると、その先で左折して樋島へと進路をとる。龍ヶ岳中学校の脇を過ぎると、堤防のようになった天草上島と椚島を結ぶ橋を通る(写真左2段目)。椚島を出ると、樋島大橋の橋脚が建つ坊主島へと駆け上っていく。
 樋島大橋は1.5車線の吊り橋。橋上やその先のループ部分ですれ違いができないので、信号で片側通行に制御されている。たまたま赤信号だったので、ゆっくりと撮影することができた(写真右2段目)。
 やがて信号が変わり、樋島大橋へと進んでいく。右側が歩道スペース。樋島には小学校はあるが中学校はないので、中学生は毎日ここを自転車で渡って先ほど通った中学校へ通っているのだろう。ループ部分を降りれば樋島に到着。港の前、広い道の終わりが折り返し地点の樋の島宮の下バス停だった。
樋の島宮の下の産交バス
樋島(ひのしま)
樋の島港から見た風景
樋島のお寺  樋島では、まず食事にしよう。港の近くには食堂と料理旅館があって、旅館の方は予約制だけれども、食堂は普通に利用できるらしい。その小さな食堂はすぐにみつかったのだが、声をかけても誰もいない。
 バスの折り返し上では、某政党の街宣車が止まっていて、街頭演説をやっている。そして、それを大勢の人が聞いているのだ。たぶん、この食堂の関係者も、あの演説を聴きに行ってしまったのだろう。これは仕方ない。山梨の山の中でも、あてにしていた食堂が、選挙の公示日で臨時休業になっていて困ったことがあった。地方政治関係の日程は、よそに住んでいてはなかなかわからないものだ。あきらめるしかないだろう。
 まずは、樋島の観光案内図にも載っていた観乗寺へ行ってみる。浄土真宗の寺としては天草最大、熊本でも有数の規模だそうで、なんでそんな大きなお寺が、こんな小さな島に建立されたかはなぞなんだとか。
 とにかく普通には車が入れないような道を行くものだから、間違えながらもなんとかたどりつく。たしかに大きい。でも建物そのものは新しいので、信仰心に欠ける自分にはちょっとインパクトがなかった。
 参拝して再び港へ戻る。街頭演説が終わっていたので食堂へ行くと、今度は街頭演説を聴いていた人がみんなで来たようで満員だった。
5.樋島港14:35→14:38高戸港(山畑運輸)410円 スーパーイーグル 
樋の島港の時刻表 樋の島港の桟橋
スーパーイーグル 樋の島大橋
 樋島を出るバスは夕方までないが、航路ならある。事前に「全国・海外 船の旅情報」というウェブサイトで、樋島13:40という船があることを知った。それに乗って姫戸港まで戻り、再びバス旅を続けるつもりだったのだ。
 ところが、姫戸港へ行ってみると、鍵の閉まった待合室に貼り紙があるだけ。しかも、13:40という便はなく、次の便は14:35とのこと。しかも、姫戸港、牟田港への寄港は取りやめになっているとのこと。幸い、対岸の高戸への寄港はやっているようで、それでは高戸まで乗ることにしよう。高戸で降りれば、当初予定していた姫戸からのバスと同じ便に間に合うはずだ。
6.龍ヶ岳郵便局前14:52→15:08赤崎(産交バス)340円 熊本22か26−33 日野
龍ヶ岳局前の産交バス  高戸港の位置がよくわからなかったのだが、龍ヶ岳の中心地であることは間違いない。港から2本ほど奥へ行った道がどうやら国道の旧道のようだ。左右を見渡すと、右側に郵便局が見える。あれが先ほど通った龍ヶ岳郵便局だろう。ならば、その前にバス停があるはず。
 港から歩いて5分とかからずに、龍ヶ岳郵便局前バス停にたどり着くことができた。バスの時間は14:51とあるから、まだ10分ほど時間がある。船の時刻は予定と違ったが、どうやらここからは当初のプランに戻れたようだ。
 やがてやってきたバスは、先ほど乗った急病代理運転士さんの車両だ。行き先の赤崎はカッコ書きで小さく表示され、集落名の池の浦が大きく書かれている。車内の乗客は少なかった。
 御所浦島へのフェリーが出ている大道港がある黒瀬の集落を過ぎて、トンネルを抜けると左側の細道に入っていく。大道小学校の前を過ぎて、小さな半島の形に沿った細道を右に左に曲がりながら走っていく。
 少し人家が見えてきたなと思ったら、そこが終点の赤崎だった。右側には小さな商店が建ち、左側には港が広がっている。バスはどこかで折り返すのかと思ったら、そのまま走っていき右折してバイパスのトンネルに消えていった。折り返しは回送だったのだ。
7.赤崎港→棚底港(タクシー代行:赤崎バス停→南平バス停 龍ヶ岳タクシー)2160円
第八栄久丸 赤崎の桟橋
第十八りゅうまる  赤崎から棚底へのバスは、平日朝の1本だけ。行き先も蔵岳高校なので、通学用のバスなのだろう。そこで、赤崎から棚倉は船を使うことにした。16時台に栄汽船と木本泰義の「りゅうまる」の2本、18時台に先ほど乗った山畑運輸の「スーパーイーグル」が1本あることも「全国・海外 船の旅情報」というウェブサイトで調べておいた。先ほどの樋島港で、待合室に貼ってあった時刻表で、事前に調べた時刻が間違っていないことを確認してある。
 最初の栄汽船の時刻が変更になっていても「りゅうまる」があるから大丈夫だ。しかしながら、乗船場所がわからない。近くの公園で子供を遊ばせていたおばあさんにたずねると、防波堤の向こう側だという。防波堤の向こうっていったいと二度聞き直すと「行けばわかるから」と言われてしまった。
 果たして、行ってみると防波堤の外側に浮き桟橋があった。防波堤にも桟橋にも、時刻表などどこにも貼っていない。しかも先ほどとは違い、下り便の途中乗船。こんななにもない桟橋に船はちゃんと来てくれるのだろうか。いやな予感は当たった。栄汽船の「第八栄久丸」も「第十八りゅうまる」も沖合を高速で通過して行ってしまった。
 しかたなく、バス停前の商店に戻り、近くのタクシー会社の電話番号を聞き、タクシーで棚底から乗る予定のバスが通る南平バス停まで行ってもらった。
8.南平16:42→17:08栖本病院前(産交バス)440円 熊本22か24−46 日デ/富士重工
栖本病院に着いた産交バス 狭隘路が続く棚底の市街地
狭隘路が続く  タクシーが南平バス停に着いたのが16:41。とりあえずバス停の時刻を確認に行くと、通過予定時刻は16:40。これは間に合わなかったかと顔を上げた瞬間バスがやってきた。あわてて手を振ってバスを止め、タクシー代を払い荷物を取ってバス停に走った。先ほど、樋島まで乗ったバスだったので、運転士さんが察してくれたのかもしれない。
 バスはすぐに国道から分かれて、左側の細道に入っていく。これが棚底の集落のようだ。バス1台がやっとの道に、棚底中央のバス停があった。その細道をそのまま進んでいくと、倉岳高校前バス停があった。土曜の午後だし、高校生が乗ってくるのかと思ったが、待ち人はいなかった。
 その先で国道に出る。左折して国道に入るのかと思ったら、そのまま直進し、山の中の細道を行く。棚底からは、これでもかと国道を避けて細道を行く路線だった。このバスは小型バスではない。ところどころ、木の枝がバスの屋根をたたく。今ではご老体の部類に入る富士重工製のバスがちょっとかわいそう。
 梅の木からは国道に戻り、左手に海を見ながら走る。栖本の町に入ると、また国道から離れて市街地を行く。
 再び国道を渡り、住宅地の中に建つ栖本病院前でバスを降りた。
栖本温泉河童ロマン館 入湯料500円
河童の像 河童ロマン館  ここで降りたのは、今乗ってきたバスがトンネル経由といって、国道のバイパストンネルを経由する便だったから。この先、南に延びた半島の金焼を経由する便は、まだ1時間ほど後になる。
 さいわい、この近くには「栖本温泉河童ろまん館」という温泉があるので、そこに行ってこよう。お昼も結局豆菓子を食べただけなので、時間も遅いが軽食くらい食べられるだろう。
 今は天草市の一部になってしまったが、旧栖本町は河童で売り出していたようで、国道沿いには河童のモニュメントも建っていた。温泉の名前も河童だ。バス停に温泉の案内はなく、たまたま通りかかった郵便配達のバイクにたずねると、丁寧に教えてくれた。バス停から歩いて5分もかからずに、目的の温泉についた。駐車場の入口や建物の前に、緑色の幟が揺れていた。
 入湯料は500円。温泉はすいていて、ゆっくり汗を流してくつろぐことができた。食堂に行くと、今日は団体さんの宿泊があって18時で閉店とある。まだ15分あるので、うどんくらいなら大丈夫だろう。かっぱうどんというのを注文すると、温かいうどんに生のきゅうりが載っていた。う〜ん、あまりにストレートな表現に味は二の次なんだなと思った。
 温泉を出ると、霧雨が降っていた。急ぎ足でバス停に向かった。
河童ロマン館
9.栖本病院前18:23→18:50本渡バスセンター(産交バス)470円 熊本22か27−13 いすゞ/IK COACH
栖本病院前の産交バス 栖本病院  バス停のすぐ隣には、立派な塔がある栖本病院が建っている。けっこう洒落た建物なので、個人経営の病院かと思ったが市立病院だった。塔の下に天草市立の文字があった。
 今日乗車する最後のバスは、金焼経由の本渡バスセンター行きだ。やってきたのは、いすゞのちょっと古めのバス。天草のバスは小型のリエッセが多いと聞いていたのだが、今日は見ることはあっても乗車する機会はなかった。いろいろな車種に出会えて楽しかった。
 いったん国道へ出るが、すぐに左折して半島を南へと走っていく県道に入る。柳田を過ぎると、バス1台がやっとの細道になる。右手は崖で左手は海。もう18:30を過ぎてはいるが、6月の九州はまだ明るく景色を楽しむことができる。
 県道も半島の先端までは行っておらず、白戸を過ぎると半島の対岸への小さな峠越え。けっこう曲がりくねった道をバスは走っていく。登り坂が下り坂に変わり、ようやく入り江が見えてきた。半島の西側は小さな入り江の連続で、そこに集落がある。その中の曲がりくねった道をバスが走っていく。最初の集落に、経由名にもなっている金焼バス停があった。
 上島と下島の間にある本渡瀬戸を瀬戸大橋で渡って、下島に入ったところが天草の中心地、本渡だった。
狭隘路の風景

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